休業のお知らせ 5/12〜31の期間、緊急事態宣言の発出によりサミュゼは休業させていただきます。お酒が提供できない世の中になるなんて想像もしていませんでした。世は「緊急事態」もとい「禁酒事態」です。
ワインの勉強をしていると必ず耳にする「禁酒法」アメリカ合衆国全土で1920年〜1933年の13年間執行されていた、お酒の製造、提供、及び輸出入をしてはいけませんという法律です(飲酒自体は禁止されていません)。そんな時代があったのかとさらっと通り過ぎていましたが、こうなるとなぜ法律を持ってお酒が禁止されなければいけなかったのかが気になります。
アメリカの建国に大きく関わったのはイギリスのキリスト教徒、中でも最も規律の厳しい「ピューリタン」の教徒たちでした。彼らの中では "お酒に酔っ払う姿は見苦しい" とされており、"人をそんな姿に変えてしまうお酒は悪魔の飲み物だ!" とお酒を世の中から排除しようとする動きが出始めます(そんな最中、ワインだけは例外とされたそうで、そこはさすがキリストの血です)。こんな都市伝説的な理論が一国のルールを創り出してしまうんですから驚きです。
しかしながらこの禁酒法、執行されたことによるデメリットが大きかったのです。製造、提供がなされないため、専門では無い人々によって造られたアルコール度数だけに特化した粗悪なお酒が裏で横行しました。その結果、人々の酔った時の素行は法律で規制される以前よりも悪くなりました。輸出入もできないのでもちろん密輸なんかも行われました。秘密に、見つからないように人々は欲求を晴らし、いよいよ規律を保つ事が難しくなるのです。なんだかごく最近に聞き覚えのあるようなストーリーです。
そんなわけで13年の歳月を経て禁酒法は廃止されました。とは云え13年もの間表向きにお酒を飲んではいけない社会が現実にあったわけで、それを思うと今の「禁酒事態」は13年よりは短い期間かなと前向きに捉える材料にもできるでしょうか。
宣言が明けて、最初の酒場で呑むお酒は美味しいに違いありません。その日までもう少しの辛抱です。
ソムリエール 藤原留衣 |