2022/02/07 02:00
先月半ばから宣言が解けて通常営業となり、街も少しずつ賑わいが戻り出したように思います。
酒類の規制がなくなって、お久しぶりにお目にかかるお客様と「元気にしてた?」と会話が出来ることがとてもありがたく感じる日常です。
先日はおよそ1年ぶりにお会いするムッシュがフランス語検定1級に見事合格されたと素敵なニュースをもっていらっしゃいました。なんと素晴らしいタイミングと言いますか、今月おすすめのシャンパーニュ”LAMIABLE TERRE d’ ETOILES”の名前の訳をどうしたらいいか気になっていたところだったのです。
Terre d'etoiles
etoileは星、terreは土地だから...と悩んだ経緯をムッシュに伝えました。地上の星?星の大地?ムッシュならなんと訳しますか?と尋ねると「ひょっとしたら熟語なんじゃないかな?」とムッシュ。おもむろにカバンから辞書を取り出して引き始めます。ムッシュご自身も納得する答えを出したいそうで「宿題にさせて」と持ち帰ってご自身のフランス語の先生に聞いてくださるとおっしゃったのです。
この日はムッシュにとってご自身のお祝いをする為にいらしてくださった日でした。お仕事の区切り、そして近かったお誕生日、ご自身を労うためにムッシュが自身のコレクションから選んでお持ちになったワインはChateau Ducru Beaucaillou シャトー デュクリュー ボーカイユ メドック格付け2級の素晴らしいワインです。
「Beaucaillou」=美しい小石という意味なのですが、かつては真逆の意味を持つ名が付けられていました。17世紀初頭にはBeychevelleの地所の一部だったボーカイユですが、その頃つけられていた名は「Maucaillou」小石や砂利が多い土壌はトウモロコシや穀物などの農産物の生育に適さないため不毛の地とされ、いつしか「mauvaise」=悪い「caillou」=小石、Maucaillouと呼ばれるようになった名残です。しかしぶどうにとってはこんなに素晴らしい環境はありません。名前とは裏腹にワインは評価を得ていき、18世紀に入るとイメージを良くするためにBeaucaillouと名前を変えました。その後Bertrand Ducru氏が所有者となり、自身の名前も入れて「Chateau Ducru Beaucaillou」と今日の名前を名乗るに至ったわけです。
ワインひとつとっても、その名前の中には沢山のストーリー隠れています。そんなストーリーのあるワインを節目のワインとして選ばれるムッシュ、そして名前の意味を知るための訳を探す事に妥協をしないムッシュはとても素敵だと思いました。
後日、宿題の回答をムッシュからメールで頂戴しました。熟語ではないけれど、この表現で思い浮かぶ表現が 「poussière d'étoile」=星屑。d'étoile の部分では、泡が弾けるような華やかな印象があり、terreで落ち着いた安定感の印象を持つとのご回答でした。なんともnobleです。星の数ほどあるワイン、その中の1本に出会えた事にまた感謝しました。11月はそんな星のシャンパーニュをご紹介します。
ソムリエール 藤原留衣
